最大手の暗号資産取引所Coinbaseが手掛けるL2チェーン「Base」のエコシステムとオンチェーン動向について
暗号資産取引所Coinbaseが開発した「Base」は、Ethereum(Layer1)の急速な成長に伴うネットワーク上での取引処理の遅延や、手数料の高騰を解決するためのLayer2ソリューションとして注目を集めています。
本記事では、「Base」のエコシステムと、オンチェーン動向について解説します。
今回の記事は、以下のような構成で進めていきます。
1.エコシステムについて
(1)Coinbase Walletの優れたユーザー体験
(2)Coinbase Smart Walletを活用したプロジェクト
(3)公式が提供するネーミングサービス
2.オンチェーン動向について
(1)トランザクション数の推移と時系列分析
(2)他のL2チェーンとの比較
(3)トランザクション数と収益
3.まとめ
1. 主要なエコシステムについて
Baseの主要なエコシステムである、Walletとネーミングサービスについて解説します。
(1)Coinbase Walletの優れたユーザー体験
Baseのウェブサイトでは、Baseに対応しているWalletが30種類以上紹介されています。
その中でも、Baseの開発元であるCoinbaseが手がけるCoinbase Walletは、Baseを普段使いする上で有力な選択肢の一つです。
BaseのwebサイトにあるエコシステムページをWalletでフィルターしたもの
Coinbase Walletでは、USDCなどの暗号資産をリンク経由で送金できます。この送金はリンクを共有できるあらゆるプラットフォームで利用でき、TelegramやLINE、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSや電子メールといったの多様なユースケースに対応しています。ユーザー体験としては、PayPayの受け取りリンクに近い感覚で使用できます。
With Coinbase Wallet, sending money is now as easy as sending a text
(2)Coinbase Smart Walletを活用したプロジェクト
Baseには、Account Abstraction(ERC4337)を使ったCoinbase Smart Walletでもアクセスできます。このCoinbase Smart Walletは、セルフカストディかつMetaMaskのようなウォレットの事前準備不要で、パスキー認証を用いて作成できます。
実際にBaseで展開中の写真(NFT)をオンチェーンで作成・ミントするアプリ「MOSHICAM」も、Coinbase Smart Walletを活用しています。
(3)公式が提供するネーミングサービス
BaseはBasenamesというネーミングサービスを公式が提供しています。EthereumのネーミングサービスであるENSと同じ技術で構築されており、Baseはもちろん、他のL2チェーンなどのEVMチェーンでの送受信にも対応しています。
Build your onchain identity with Basenames
2. オンチェーン動向について
Baseの週次トランザクション数の推移とイベントを時系列分析し、他のL2チェーンと比較した内容を解説します。
(1)トランザクション数の推移と時系列分析
Baseのメインネットは、2023/7/14にビルダー向けにオープンしました。そこから、2023/8/9のユーザー向けのオープンまでは、EthereumのメインネットからETHをブリッジする事しかできず、Dappsの公開は控えるようにという声明が出ていました。
2023/8/9のメインネットの一般公開を記念して、第一回Onchain Summerというアート、音楽、ゲームなどに焦点を当てたオンチェーンイベントが開催されました。イベントの効果もあり、メインネットが一般公開された2023/8/9週は約387万トランザクションを記録し、立ち上げに成功しました。その後、トランザクション数は小幅に上昇したものの、2024年3月までは概ね横ばいで推移していました。
しかし、2024/3/13頃に行われたイーサリアムの大型アップグレード「Dencun」によって、Baseやその他L2チェーンのネットワーク手数料が大幅に減少し、トランザクション数が急激に上昇します。
Dencunが行われた2024/3/11週に約734万トランザクションを記録し、1か月後の2024/4/8週には約2039万トランザクションまで上昇しました。その後も、2024/6から始まった第二回Onchain SummerやBasenamesの提供開始、on-chain address scoreの公開などもあり、2024/8/26週には約3010万トランザクションを突破しました。この期間は、OptimismのメインネットTVL(預かり資産)をBaseが上回り、1 日あたりのアクティブ アドレス数が100万に到達するといったポジティブなニュースが多くありました。
(2)他のL2チェーンとの比較
Baseと主要L2チェーンであるArbitrumとOptimism、同じSuper Chainであるzoraを日次トランザクション数で比較すると、Baseは2024/9/2時点で約400万トランザクションを超えているのに対して、Arbitrumは約150万、Optimismは約64万、zoraは10万トランザクションという数字になっている。
過去90日を遡ると、2024/6/20時点でBaseは約334万、Arbitrumは約349万トランザクションを記録しており、Arbitrumがトランザクション数でBaseを上回った日はあったものの、その日以降はArbitrumの下落傾向が目立つ。また、2024/7/18時点でBaseは、400万トランザクションを単独突破しており、その後も第二回オンチェーンサマーなどの影響で上昇を継続している。
(3)トランザクション数と収益
Baseのトランザクション数は大きく増加している一方、収益は減少しているという見方もあります。実際、Dencunによるネットワーク手数料の大幅な減少と、コスト減少を上回る収益の減少が確認できます。
この収益減少は他のL2チェーンも同様の事象であり、Dencun以前のL2ネットワーク手数料による総収益は、2024/3/4週のピーク時で約2600万ドルだったのに対して、2024/9/2週時点で約98万ドルまで落ち込んでいます。
3.まとめ
Baseは優れたエコシステムとオンチェーンサマーやBasenames、on-chain address scoreといったアプローチで、着実にL2チェーンとしての価値を高めてきています。しかしながら、この成長には、イーサリアムの大型アップグレード「Dencun」とそれに伴う利益の減少といった背景もあります。今後もOP Stackを活用したSuperChainを牽引するL2チェーンとして、引き続き動向を追っていきます。
前回の記事では、Baseの特徴、Soneiumとの類似性について解説しています。Baseの特徴を振り返りたい方、国産L2チェーンSoneiumとの類似性に興味のある方はぜひ読んでください。
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最大手の暗号資産取引所Coinbaseが手掛けるL2チェーン「Base」の特徴と「Soneium」との類似性について
執筆者:こにちゃん
最後まで読んでいただきありがとうございました。