最大手の暗号資産取引所Coinbaseが手掛けるL2チェーン「Base」の特徴と「Soneium」との類似性について
暗号資産取引所Coinbaseが開発した「Base」は、Ethereum(Layer1)の急速な成長に伴うネットワーク上での取引処理の遅延や、手数料の高騰を解決するためのLayer2ソリューションとして注目を集めています。本記事では、「Base」の概要、特徴、拡大戦略と、2024年8月23日にソニーグループのSony Block Solutions Labsが発表した国産L2チェーンの「Soneium」との類似性について解説します。
今回の記事は、以下のような構成で進めていきます。
Baseについて
Baseの特徴
Layer 2ソリューションとしてのBase
OP StackとOptimistic Rollupの採用
Coinbaseとのシナジー
Baseの拡大戦略
エコシステムを活発にするイベントとビルダー支援
シームレスなオンボーディング体験とアプリケーションの拡大
大手企業とのコラボレーション
Soneiumとの類似性
大手企業によるバッキングという業界背景
Superchainという共通点
開発目的に関する相違点
まとめ
Baseについて
Baseの特徴
Layer 2ソリューションとしてのBase
Baseは冒頭でも記載した通り、Ethereum(Layer1)の取引処理の遅延や手数料の高騰などのスケーラビリティ問題を、解決するためのLayer 2ソリューションです。このスケーラビリティ問題は、Ethereum(Layer1)のスケーラビリティ・1秒間の取引処理件数(TPS=Transaction Per Second)が少ないことに起因しています。
現在のBaseは、Layer 2ソリューション全体をTVL順で並べた際にTOP3以内に入っている、Layer 2ソリューションの中でも勢いのあるブロックチェーンになります。
主要なLayer 2ソリューションのTVL(2024年9月9日時点)
OP StackとOptimistic Rollupの採用
Baseは同じLayer 2ソリューションのOptimismが提供している、OP StackというオープンソースのLayer 2ソリューションを開発するソフトウェアを活用し、Optimistic Rollup方式を採用しています。
What is the Superchain? The Complete Guide
このOP StackとOptimistic Rollup方式を採用しているプロジェクトは、Zora、Celo、opBNB、Worldcoin等です。OP Stackを活用し、Optimistic Rollup方式を採用しているプロジェクトは、標準化されたアーキテクチャによって、相互運用性が担保されます。その代わり、Optimismはネットワーク収益の一部を受け取ります。このような仕組みをSuperchainと言います。
Coinbaseとのシナジー
Baseは、従業員3400人以上、100か国・24万以上のエコシステムパートナーを抱える米国最大手の暗号資産取引所Coinbaseが開発しています。
Base上に構築される次世代のオンチェーンプロジェクトへ投資するBase Ecosystem Fundも、Coinbase Venturesが主導しており、Baseエコシステムの拡大にCoinbaseの資金が投入されています。
Base Ecosystem Fund announces first six investments
そもそもBaseの構築は、Coinbaseが2016年に発表した「世界に向けてオープンな金融システムを構築する」(The Coinbase Secret Master Plan)に基づくものです。実際に2024年度のBaseロードマップとして、coinbase、Coinbase walletとの接続やオンチェーン製品の発表といった内容が名言されています。
Base's 2024 Mission, Strategy and Roadmap
Baseの拡大戦略
エコシステムを活発にするイベントとビルダー支援
ビルダー、クリエイターへの手厚い支援も戦略の一つです。
「Onchain Summer」というイベントでは600 ETHを超える賞品、助成金、ガス クレジットを提供しており、デベロッパー向けのドキュメントも充実しています。
また、Onchain Summerは経済的な支援だけではなく、アプリケーションにとってインフラであるBaseがマーケティングを支援しているようなお祭り状態になるため、アプリケーションのプレイヤーにとってBaseを利用することの魅力が高まります。
シームレスなオンボーディング体験とアプリケーションの拡大
Baseを開発するCoinbaseは、ユーザーオンボーディングにおいても整備をしており、CoinbaseWalletの提供から始まり、CoinbaseのベンチャーキャピタルであるCoinbase Venturesの出資を受けるウォレットサービスPrivyとパートナーを組んでいます。
https://www.privy.io/blog/deepening-our-partnership-with-coinbase
また、Coinbase Venturesによるzoraやparagraphなどのアプリケーションレイヤーへの投資やBlackbirdやDoodlesによるアバターカスタマイズサービス The StoodioのBaseの採用などアプリケーションの拡大を進めています。
大手企業とのコラボレーション
Baseはweb2の大手企業とのコラボレーションによるマーケティングが特徴的です。Baseの立ち上げを祝う形でコカコーラとコラボして販売されたデジタルアートコレクション「Masterpiece」は、50万ドル以上の売上になりました。
‘Masterpiece’ Collection Fetches More Than $500k in Coinbase Drop
Soneiumとの類似性
BaseとソニーグループのSony Block Solutions Labsが発表した国産L2チェーンのSoneiumは、類似点と相違点を解説します。
大手企業によるバッキングという業界背景
Baseを開発しているCoinbaseは、2021年4月14日にNASDAQへ上場しています。Soneiumを開発しているSony Block Solutions Labsの親会社であるSonyは、1970年9月17日に日本で初めてNYSEに上場しています。既存金融機関に上場しており、認められている企業が母体にある点で、両者は類似しています。
Superchainという共通点
前述したとおりBaseはOP Stackを活用しており、Soneiumも同様にOP Stack活用することから、両者はSuperchainという共通点を持っています。
Superchainを採用することはOP Stackが持つセキュリティを活用することができることや相互運用性が担保されていることなど開発コストを下げるメリットとOptimism側がマーケティングをすることで自チェーンにインセンティブが還元されることでマーケティング効果を高めることができるという2点において優位であると考えられます。
Welcoming Soneium to the Superchain
開発目的に関する相違点
Baseは前述したとおり、Coinbaseが2016年に発表した「世界に向けてオープンな金融システムを構築する」(The Coinbase Secret Master Plan)ことを目標に開発されています。
一方、Soneiumは「国境を越えたオープンインターネットを実現する」ことを目標に開発されています。前者はオープンな金融システム構築に重点を置いており、後者はweb3(オープンインターネット)の構築に重きを置いているという相違点があります。
ただ、ビルダー、クリエイターに対するインキュベーションプログラム(Soneium Spark)など、拡大戦略には類似点も見受けられます。
Soneium Minato テストネットが Soneium Spark インキュベーション プログラムとともに公開されました
まとめ
Baseは2024年9月9日時点で420万件以上のトランザクションを記録しており、ATHを更新しました。主要なLayer 2ソリューションと比較しても、圧倒的な水準であるため、注目すべきチェーンだと思います。個人的には、国産L2チェーンのSoneiumも現在勢いのあるBaseと類似する点が多いので、これからの動向に注目していきたいと考えています。
次回の記事では、Baseのエコシステムと実際のオンチェーン動向について深堀していきます。Baseについて興味を持った方は、ぜひ次の記事も読んでください。
執筆者:こにちゃん
最後まで読んでいただきありがとうございました。